センター長からのメッセージ

大規模長期渇水を生き抜く智慧比べ

 今世紀に入り、世界各地から大規模長期渇水が報告されています。オーストラリアでは2001~2009年にミレニアム渇水と呼ばれる大渇水が生じ、政府からの農家への直接支援だけでも44億豪ドルに達したといわれています。2010~2013年にアフリカの角と呼ばれるソマリアやサヘルで大渇水が生じ、3100万人もが深刻な影響を受けました。2011~2017年にはカリフォルニア大渇水が生じ、とりわけ厳しかった2014年は1200年に1回の渇水と言われ、この1年で経済的被害は220万USDに達しています。ブラジル東北部も2012~2017年に大渇水を経験し、深刻な農作物被害や電力供給不安が報告されています。

 自然植生はその形質を変化させることによって大規模長期渇水を生き抜いているようです。オーストラリアのミレニアム渇水の事例を、可視・近赤外とマイクロ波を用いた衛星観測と陸域水文―生態系結合モデルで解析すると、経年的に植生バイオマス量は減少しているものの、緑被率には大きな変化が見られないことが示されています。この植生緑被の渇水に対するレジリエンスは、光合成によって生成した炭素を葉や茎に配分する割合を変化させることによって、渇水を生き抜く植生の戦略であると考えられています。

 ICHARMでは世界銀行の要請を受けて、ブラジル北東部のセアラ州を対象に農業的な渇水のモニタリングと季節予測情報を提供するプロジェクトを、東京大学とセアラ州気象水資源財団(FUNCEME)との協力で進めています。本年3月末には、データ統合・解析システム(DIAS)と衛星観測を基にした陸面-植生結合データ同化システム(CLVDAS)を用いて州レベルの情報提供システムのデモを行いました。その有用性が認められた結果、同州の農業指導員ネットワークによって収集される各地区の営農情報が、州農業局からDIASにリアルタイムに提供されることになりました。ICHARMは、大規模長期渇水を生き抜く自然植生の叡智に負けない、統合的でテーラーメイドな情報共有システム作りに取り組んでいます。

2019年4月26日
水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM) センター長
小池 俊雄