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センター長からのメッセージ

ご挨拶

  異次元に向かう -102から103へ-

 2017年7月、12時間に900ミリ(解析雨量)にも達する豪雨が九州北部の中山間地を集中的に襲いました。深層までマサ化した花崗閃緑岩で構成される中山間地では至る所で土石流が発生し、生産された大量の土砂と倒木は洪水流によって流下し、のどかな谷底平野の風景は一変しました。土砂の堆積によって細い河道は埋め尽くされ、流れの場を失った洪水流は流木とともに谷底平野の幅一杯に波を打って流れ広がり、尊い人命を奪い、家屋、田畑、交通網を破壊しました。

 『日本書紀』によれば、被災した地域には661年に都が構えられており、長年にわたって生活、生産の基盤を築かれ、コミュニティが形成され、文化が育まれてきました。一方、人々が暮らす谷底平野という地形は、今回のような膨大な自然の営力によって形成されたものに違いありません。「氾濫水と土砂堆積による微地形形成が教科書通り進んだ」というのは地理学者の言です。

 日本における近年の治水施設整備は、80年から200年に一度の確率で発生する洪水を対象としてきました。2007年にまとめられたIPCC第4次評価報告書では、人間が排出する温室効果ガスによって気候が温暖化しているのは疑う余地はないと断言され、7年後の2014年にまとめられた第5次評価報告書でもまったく同じ表現が用いられました。この気候の変化に伴って、大雨の頻度、強度と降水量の増加が予測されております。実際に、地形の変化をも引き起こす異次元の豪雨、つまり102年に一度から103年に一度にもおよぶ豪雨が生じています。その影響は流域面積が狭く、短時間で洪水が流下する中山間地において大きくなります。水文学を学ぶ者にとってこれらは常識のはずでした。知識と行動力が足りないという、忸怩たる思いです。科学的想像力を高め、技術と制度とコミュニティの力で異次元の災害に対応できる社会づくりに早急に取り組まなければなりません。

2018年1月31日
水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM) センター長
小池 俊雄

 

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