センター長からのメッセージ

ファシリテータ -水災害リスク軽減の切り札

 気候変動の下で水災害ハザードが激甚化し、人間由来の活動とも相俟って、水災害は深刻な状況を呈しています。被害の増加は先進国、発展途上国両方にみられ、科学・技術や経済の成長、発展が必ずしも水災害リスクの軽減につながっていません。ハザードや災害に関する学術的理解が深まっているのに、その成果が十分に活用されずに、損失は増加し続けているのはなぜでしょうか。

 2017年11月、防災・減災に関わる国内外機関の協力により、「災害レジリエンス構築のための科学・技術国際フォーラム2017」が日本学術会議にて開催され、「東京宣言2017」が採択されました。この宣言に沿って議論を重ねた結果、災害リスク軽減のためのラストワンマイルを乗り越えるための戦略として、社会と科学・技術の溝を埋めるファシリテータを育て、その機能の強化が必要という結論に至りました。つまり、個人・自治会・地方自治体・国家のそれぞれのレベルに対して、信頼関係を構築して、問題の構造を明らかにし、解決方法やその組織体制を提案し、目標を提示するもので、これらを人々が納得できる説明をする機能の強化です。そのためには統合的な科学・技術の知見、成功事例などの経験知が不可欠で、国内外の利害関係者が相互に協力してオンラインで利用できる体制づくりが必要です。

 委員長としてこの議論に加わらせて頂きながら、ICHARMにはファシリテータとしての役割が強く求められていることに気づきました。各国の若い政策決定者や実務者を対象とした修士・博士課程の教育はファシリテータを育てる活動であり、国内での市町村との水災害情報の効果的利用の協力や、アジア・アフリカ各国とのプラットフォームを通じた協働の推進は、ファシリテータとしての活動なのです。科学・技術の最先端を極めつつ、ファシリテータとしての機能の向上に尽力していく所存です。

2019年7月31日
水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM) センター長
小池 俊雄