ICHARM -- The International Centre for Water Hazard and Risk Management

ニュース


修士課程『2008-2009 防災政策プログラム 水災害リスクマネジメントコース』
実施報告

政策研究大学院大学正門前で集合写真
政策研究大学院大学正門前で集合写真(平成21年9月16日)

ICHARMは、平成20年9月30日から平成21年9月19日まで約1年間、(独)国際協力機構(JICA)および政策研究大学院大学(GRIPS)と連携し、修士課程『水災害リスクマネジメントコース』を実施しました。
当初9名の学生でスタートしましたが、最終的に、学生7人(中国2名、バングラデシュ2名、ネパール1名、インドネシア1名、エチオピア1名)が無事に審査に合格して『修士(防災政策)』の学位を取得し、本国へ帰国しました。


竹内センター長による講義風景

本コースの特徴としては、1年で修士号を取得できること、学生が自国で実際に抱えている問題の解決策を提案できる能力を向上させる『課題解決型』の研修であること、及び『理論より実務』を重視する研修であることなどが挙げられます。
コース前半では講義・演習を集中的に実施しました。内容としては「防災政策」、「災害リスクマネジメント」、「統合洪水リスクマネジメント」、「水文学」、「水理学」などの基礎的講義・演習だけではなく、「地域防災計画及びハザードマップ」、「ダム工学」、「砂防工学」「プロジェクトサイクルマネジメント」などの実務的な講義・演習も実施しました。


伊勢市大湊地区での「タウンウォッチング」演習

「タウンウォッチング」演習でのグループディスカッション

平成20年11月は、ICHARMがJICA研修として実施している「洪水ハザードマップ作成」コースと合同で講義・演習を実施しました。生徒数は両コース合わせてバングラデシュ・カンボジア・中国・エチオピア・インドネシア・ラオス・マレーシア・ネパール・フィリピン・タイ・ベトナムの11ヶ国から、合計19人にもなり、これほど多くの国籍の学生が一堂に会して授業や演習を行うことは、両コースの学生にとって大いに刺激になったと思われます。特に、三重県伊勢市においては、「タウンウォッチング」演習をグループ毎に実施し、各グループが実際に歩いたルートを地図上に作図しながら、洪水災害に対して事前にどのような対策や住民への意識啓発を行うべきか議論を行い、学生の理解を深めることが出来ました。

また、日本の治水対策についてより深く学ぶために、渡良瀬遊水地、首都圏外郭放水路、神田川・環状七号線地下調節池や鶴見川遊水地などの首都圏における洪水対策現地視察(平成20年10月)、斐伊川・太田川などの中国地方現地視察(平成21年3月)、胆沢ダム建設現場や一ノ関遊水地現地見学、岩手県奥州市羽田地区・宮城県気仙沼市での防災活動への取り組みに関するヒアリング(平成21年6月)、芋川河道閉塞・信濃川分水路・黒部川土砂対策などの現地視察(平成21年8月)など、日本を代表する河川の現地見学を実施しました。


斐伊川改修事業の説明を受ける
(大橋川コミュニティセンターにて)

奥州市羽田地区の方へのヒアリング
(羽田公民館にて)

コース後半では、各学生がそれぞれの国での水災害に関する課題解決に資するための修士論文作成に十分に取り組めるよう配慮しました。学生は、不慣れな日本での長期間の生活に苦労しながらも、ICHARMの研究員から適宜有用なアドバイスを受けながら修士論文を作成しました。そして、平成21年8月7日に行われた修士論文の発表会では1年間の成果を各自披露しました。
論文作成を通じて、学生の知識が豊富になるばかりでなく、ICHARMにとっても学生との関係が緊密になります。学生を通じたこのような国際的なネットワーク形成は、今後のICHARMの活動にも大いに役立つものと思われます。
また、今年度のコースからは日本の学会への論文投稿を積極的に勧め、その結果8月の水文・水資源学会や9月の土木学会国際シンポジウムにおいて、それぞれ学生2名が発表することが出来ました。このような学生の発表の場を彼らへ提供し、よりよい修士論文作成への動機付けを行うことは今後も積極的に行っていきたいと考えています。


Robin氏による水文・水資源学会でのポスター発表

Jin氏による土木学会国際シンポジウムでの発表

学位授与式(GRIPS)

”Outstanding Award”授与

平成21年9月16日には、GRIPSにて学位授与式が、18日にはJICA筑波にて閉講式が行われました。本コースで最も優秀な成績を修めた者に贈られる”Outstanding Award”は、バングラデシュのRobin氏に授与されました。

このコースの目的としては、社会的要請に必要な最新の技術を持ち合わせている専門家を養成し、その結果、一国の計画における災害マネジメントの重要性を彼らが政策決定者に提示することができるようにすることを掲げています。しかし、これは一朝一夕に出来るものではなく、帰国後も継続してフォローアップを行う必要性を感じています。

本コースは2年目となりますが、1年目の反省を踏まえて全体スケジュールやカリキュラムの見直しを行い、より充実を図ってきましたが、まだまだ改善すべき点は多くあり、皆様のご意見を頂ければ幸いです。
最後になりましたが、本コースを実施するにあたり、多忙な中講義や演習を行って頂いた各大学の先生方及び行政の方々、現地視察を快く引き受けて頂いた国土交通省事務所ならびに市町村の方々や住民の方々に厚くお礼を申し上げます。


JICA筑波での閉講式集合写真(平成21年9月18日)

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