講演後は、質疑応答の時間を設け、ハンガリーの洪水対策等について、議論がなされました。
 
 
updated in February 2004
 

日時:2004年1月28日 18:00〜20:00

場所:国土交通省河川局A会議室

出席者:

国土交通省河川局河川計画課 大谷 悟
国土交通省河川局河川計画課 石川博基
国土交通省河川局河川計画課 表 敏晴
国土交通省河川局治水課 室永武司
国土交通省
河川局防災課 諏訪義雄
国土技術政策総合研究所 村瀬勝彦
国土技術政策総合研究所 鈴木 温

(財)国土技術研究センター 藤山秀章
(財)河川情報センター 藤井友竝
(財)リバーフロント整備センター 田中長光
(財)砂防・地すべり技術センター 藤田久美子
(財)砂防・地すべり技術センター 反町雄二
(財)水資源協会 尾芦直人
(財)ダム水源地環境整備センター 田中利文
(社)国際建設技術協会 永井昌彦
(独)土木研究所 北川 明
(独)土木研究所 吉谷純一
(独)土木研究所 蔡 孝錫
(独)土木研究所 清水敬生

質問: ハンガリーでは、被災した個人財産を政府が補償するその歴史的バックグラウンドは何か?
阪神淡路大震災において、日本では、40万棟の被害があった。
日本では、個人財産の形成につながる助成は慣習的に行っていない。
撤去については政府が援助した経緯がある。建築に対しては特別融資は実施したが、建築費用は助成はしなかった。

Bayer: もともと共産主義の国であり、被災した財産の補償は国が行っていた。今の時代になっても、人々の中ではその感覚が抜けきれていない。
ただ、隣国のオーストリアでも社会主義ではないが、全額政府が保証している。
オーストリアではスウェーデンのように、社会福祉の考え方が進んでいるためと考えられる。
なお、地震については、カリフォルニア地震と比べた場合、USAよりも日本の保護の方が手厚かったと記憶している。

質問: 地震保険は関西ではあまり入っていなかったのが、不幸だった。東京でも高額であり、加入者が多いとはいえない。

Bayer: 保険料が高額であることが問題である。保険加入率は神戸2.5% 東京10%と聞いている。
地震保険は日本ではとても高い。安く、みんなで入れるものを考える必要が有るのでは?
利害関係者を集めてやってみる価値があると考える。

質問: 日本では地震についての関心が非常に高くなってきているので、可能性は有ると思う。

Bayer: 大災害ボンドを発行するのはいかがでしょう?投資家が投資できるようにして、より多くの資金(基金)調達をしてはいかがでしょう?
質問: 水害保険について研究していました。
その研究では、日本においてはプライベートセクターは成立しないという、結論であった。
水害保険を成立させるには、一つは強制保険として全員加入を法制化すること、更に政府が再保険を掛けないと成立しないことがわかった。
しかし、日本政府は個人の財産をサポートしないので、強制保険の法制化は事実上難しい。
政府の考え方が変れば、可能性はあると思う。
合意形成の方法が大事だと思うが、日本の場合、250の事務所と、6000万人の想定被害者がある。
こんな場合への、何かアドバイスがあれば、お聞きしたい。

Bayer: ハンガリーであっても全国規模では、おこなっていない。
パイロットスタディーとして小さな領域(ティサ川流域)で研究をし、成果を得た。これを基に全国的な規模での合意を形成していくことは、これからの課題だと考えている。

質問: ケーススタディにおける利害関係者はおおよそ何人ですか?

Bayer: ワークショップは24人、アンケートは400人に対して実施した。
一般住民を入れるのは大変困難だと考えている。代表を選ぶのが大切である。
人選が非常に重要であり、かつその人達にその重要性を判ってもらう時間を十分に取り、その人達の発言の重要性を理解してもらってから参加してもらう必要がある。  

質問
: モデルの信頼性をどのように確保したのか?また、ワークショップでどのように説明したのか?

Bayer: まず最初に、一つのモデルであること、現実ではないことを説明した。
もちろんモデルは日々改良している。気候変動、土地利用の変更などを入れてアップデートすることはおこなっている。

質問: 保険を議論する前の議論の前提として、堤防の築堤などハードの整備を行いリスクそのものの軽減を考えることはあったのか?

Bayer: 洪水被害の削減・リスクの軽減の検討は、別の部会で同時に行った。堤防を高くする、貯水池を作るなど提案があった。
当然、二つの議論では衝突があった。

質問
: それらの軽減措置も、モデルに入れて議論したのか?

Bayer: 一応入れてモデルは作り込んだ。しかし、それらのオプションは、大きな効果は見込めなかった。

質問:ワークショップに当たって、期限のようなものを定めていたのか?

Bayer: 制度改正に間に合わせないと議論そのものが無駄になってしまうため、同意点を見つけるようとするインセンティブが参加者の間に働いたのではないかと思う。

質問
: ハンガリーの貧しい農民は何故政府からの補助が少なくなることを受け入れたのか?農民が将来の増税や国家財政破綻のシナリオを見て、納得したのか?

Bayer:これから先、国から同じサービスを受けることが不可能であることを農民が理解したのが、ターニングポイントであった。財政的に不可能であることが周知された。
他のサービス(保険)を利用することで合意することになった。