グローバルに通用する多面的な水災害リスクの評価及び評価に基づく強靭な社会構築手法に関する研究

研究の背景と目的

わが国では、国土強靱化基本法に基づき、各地で強靭な地域社会を構築するための取り組みが行われている。強靱な国土・経済社会システムとは、「私たちの国土や経済、暮らしが、①災害や事故などにより致命的な被害を負わない強さと、②速やかに回復するしなやかさをもつこと」と定義されている。

①及び②については、最悪の事態も含め、事前にあらゆるパターンの災害を想定した上で、災害により直接生じる物的被害だけでなく、間接被害も含めた多面的な災害リスク評価を行い、地域の脆弱性を把握する必要がある。

特に、「②すみやかに回復するしなやかさ」については、評価手法が十分に確立されていない。既往の災害における建物被害やライフライン途絶後の地域機能の回復状況についての検証を行い、従来手法では十分に評価できていない「しなやかさ(レジリエンス)」についても評価できるよう手法の高度化を図る必要がある。また、同時に、手法の高精度化も図る必要がある。

将来的に人口減少が想定される我が国においては、今後、立地適正化計画に基づき、災害リスクの低い地域への居住や都市機能の誘導を図るコンパクトシティー化を進める必要がある。このためには、想定浸水深さなどのハザード情報だけでなく、リスク情報を用いてコミュニティーや集落の安全性をわかりやすく表現するためのリスク指標の開発が必要である。

これらの指標を用いて、インフラ整備、避難計画の充実、コンパクトシティー化、災害に強いまちづくり等の各種施策の減災効果を総合的に評価することにより、政策決定者が強靭な社会構築に向けた適切な防災施策・投資を選択することが可能となる。

2015年3月に仙台で開催された「第3回国連防災世界会議」においては、「仙台防災枠組2015-2030」の7つの目標を達成するための4つの優先事項の一つとして、「災害リスクの理解(Understanding disaster risk)」及び「よりよい復興(Build Back Better)」が挙げられた。

人口増加が想定される途上国においては、地域の災害リスクを適切に把握し、災害リスクが高くなる開発を避け、既存の災害リスクを低減させることにより、将来の災害被害を未然に防ぐための計画的な地域強靭化を図る必要がある。さらに被災した場合には、今後同じ災害が起こらぬよう、復興にリスク低減の視点を盛り込む必要がある。このため、上記の多面的な災害リスク評価手法及び指標は、グローバルにも通用する手法として開発し、国内外での活用を目指す。

研究期間

平成28~32年度

研究担当者

上席研究員藤兼 雅和
主任研究員大原 美保

達成目標

  1. 多面的な災害リスクの高精度・高度な推計手法の提案
  2. 各種の防災施策・投資による減災効果を総合的に評価するリスク指標の提案
  3. リスク指標を活用した国内外における強靭な地域社会の構築手法の提案