水災害・危機管理意識の向上に資する
リスク・コミュニケーションシステムの開発

研究の背景

  • 平成27年の鬼怒川、平成28年の北海道・岩手の洪水土砂災害、それを受けた社会整備審議会河川分科会の答申「水防災意識社会の再構築」を踏まえ、水防法や土砂災害防止法が改正され、緊急行動計画が実施された。
  • その後、平成29年の九州北部豪雨では河川事務所長からホットラインによって各市町村長へ注意喚起が頻繁に行われ、避難勧告、避難指示が適時に発令された。しかしながら、死者・行方不明者が43名(8/21現在・消防庁)にも及んでいる。
  • 水害が迫りつつあるとき、一人一人が想像力を高めて事前に行動するための心理的な“ラストワンマイル”を埋めるとともに、ハード整備や土地利用の誘導による平時からの対策についての合意形成を進め、水災害に対してレジリエントな社会を構築していくことが求められている。

研究の目的

データ統合・解析システム(DIAS)上に、水災害に関し平常時から非常時までシームレスかつ統合的に再現・予測し、可視化するシステムを構築し、各地域の行政や自主的防災組織と協力して、これらの情報を補完的に用いて、行政・住民が一体となった非常時のタイムラインづくりや平時からの対策についての合意形成のプロトタイプづくりを支援する。

併せて、人間の思考・行動を中心に据える「ヒューメイン」の視点から、心理プロセスの地域特性や変化過程に応じたラストワンマイルに必要な要素を分析し、それをシステムに組み込むことによって、各主体が水災害の可能性を我が事としてとらえ、非常時の行動や平時からの対策に向けて取り組む環境づくりを支援する

研究期間

平成30~34年度

研究担当者

上席研究員 伊藤 弘之、藤兼 雅和
主任研究員 大原 美保、Abdul Wahid Mohamed RASMY、傳田 正利
研究員 諸岡 良優
専門研究員 牛山 朋來、玉川 勝徳、南雲 直子、原田 大輔
交流研究員 中村 要介

達成目標

  1. 水害の統合的な再現、可視化
    (1) DIAS上に、複数の水害事例を対象として総観スケールからメソスケールの大気場と豪雨システム、洪水氾濫・土砂流動の観測データ、再現および予測計算出力、被害データを統合的に再現し、その精度を検証し、不確定性を定量化し、結果を可視化するシステムを構築する。
    (2) (1)のハザードが近傍の河川で生じた場合に想定される状況をシミュレーションし、可視化する。
  2. 心理プロセスの特徴を踏まえたシステム設計
    (3) (1)および(2)の該当地域より代表市町村を選定して、現行のタイムラインに対して、行動に至る心理過程の初期調査を行い、心理プロセスの特徴を把握し、補うべき有効な情報とその実装のための機会を設計する。
    (4)(1)及び(2)の情報を用いた場合の、行政、住民協働によるタイムラインを策定し、運用訓練を行う。

研究説明資料