ミャンマー国・シッタン川河口域 は、砂州や網状河道などの特徴が見られ、激しく変動しています。これは、河川流と潮汐運動の双方の影響を受けて、侵食と堆積が活発に起こっているからです。特に2014年以来、シッタン川西側では、河岸侵食によりかなりの農地が消失するなど、その対策は喫緊の課題となっています。
2017年5月、ミャンマー政府(運輸省水資源河川系開発局(DWRI))から ICHARM に、浸食対策立案の要請があり、検討の結果、ミャンマーで研究実績を有する東京大学と共同 で、現地の基礎調査を行うこととしました。
現地調査に先立ち、特に著しい侵食が認められる河岸部分について、ICHARMの郭栄珠専門研究員が、 2007年から2017 年の10年間変化を事前に把握するために、ALOSおよび ALOS-2(©JAXA)の SARデータと Landsat-8(©NASA)の光学衛星データを組み合わせて画像分析を 実施しました。図1はその結果の一例であり、一年足らずのうちに、最大侵食距離が 2 km超に達していることがわかります。
この事例を含め、現状を把握するため、ミャンマー国水資源・河川 整備総局の協力を得て、2017年10月 29・30 日に東京大学と共にシッタン川現地調査を実施しました。 ICHARMからは、江頭研究・研修指導監、澤野グループ長、Shrestha 主任研究員、郭専門研究員が参加しました。2日に渡り実施した調査では、土砂の粒径等の性質を分析するため、河床および河岸から土砂を採集し、また、河床・河岸侵食の現状把握のため、ドローン(©MAVIC pro, DJI, China)を利用して、代表侵食箇所 (図1内の H 印)の空中写真・映像を撮影しました。さらに、Su Pa Nu 村付近のシッタン川に水圧センサーを設置し、潮位の影響を受けていると考えられる河川水位測定を行いました。水深は、魚影センサーを使って、ボートの軌跡に沿って測定しました。
2017年10月の基礎調査結果を踏まえ、2018年2月16日~18日には、江頭研究・研修指導監、萬矢主任研究員、Shrestha 主任研究員、郭専門研究員、小関研究員が以下の追加調査を行いました。
なお、今回の現地視察においても、運輸省水資源河川系開発局(DWRI)の多大な協力を仰ぎました。
調査中、参加者は、海嘯によって大きく河岸が侵食される様子を目の当たりにし、日本の川ではあまり見られないダイナミックな現象に驚いていました。本調査の結果については、追ってICHARMニュースレター等で報告する予定です。
海嘯による河岸浸食の様子(動画)
ドローンによる上空からの調査(動画)
ADCPによる土砂流入調査の様子(動画)
河床・河岸材料の採取の様子(動画)