途上国には水災害リスク評価に必要な精度の高い地形データがない場合が多く、衛星による地形データの活用が求められています。本研究においては、NASAのSRTM3及びJAXAのALOSデータを用いた場合の地形再現の精度検証を行い、浸水氾濫計算のための衛星地形データ処理手法を開発するとともに衛星地形データを活用した水災害リスクの評価手法を開発します。
発展途上国における総合的な洪水リスクマネジメント方策の事例研究(重点プロジェクト研究)
途上国流域を対象とした洪水予警報やハザードマップの導入などの各種対策群の被害軽減効果を評価する手法を開発し、効果的な被害軽減方策を提言するための事例研究を行います。
国際洪水イニチアチブ(IFI)の枠組み等を利用して構築する世界各地の有識者とのネットワークを通じて、洪水災害後の政策変化とその要因分析にかかる資料を収集し、世界洪水年鑑としてとりまとめて情報発信します。
World Water Assessment Program(WWAP)
多くの国際会議やフォーラムが開催される中で、世界の淡水資源がおかれている状況を継続してモニタリングし、評価する必要があることが少しずつ認識されるようになってきました。例えば、「水問題の歩み-1972~2003-ストックホルムから京都まで」をご覧ください。国連は水アセスメントを系統的に継続して実施することを確かなものとするため、世界水アセスメント計画(WWAP:World
Water Assessment Programme)を2000年3月から開始しました。WWAPの主要な活動成果は世界水開発レポート(WWDR:World
Water Development Report)として、2003年3月に日本で開催された第3回世界水フォーラム期間中に発表されました。WWDRには、テーマ別・手法別の事例研究、水情報、そしてキャパシティービルディングに関連する内容が盛り込まれることになります。
本研究は、独立行政法人科学技術振興機構 (JST:Japan Science and Technology Agency) の戦略的創造研究推進事業(CREST:Core Research for Evolutional Science Technology)の研究プロジェクトとして採択された「人口急増地域における持続的な流域水政策シナリオ」の一環として平成15年10月より実施されているものです。中国水利水電科学研究院との共同研究体制のもと実施しています。
長江の中流氾濫原および下流デルタ地域には人口・資産・農地が集中している一方で、同地域は洪水の常襲地域ともなっています。したがって、この地域における洪水防止体系の構築は、中国の持続的な経済発展にとって、重要な課題の1つです。私たちの研究は、流域での長江の治水政策を分析し、グッド・プラックティスを見つけ出し、社会科学的な考察を加えて日本を含む他国への適用を可能にすることを目標としています。そのために、私たちは、中国における政策立案過程、および実施過程の社会科学的な分析というアプローチをとっています。
本研究は科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業 (CREST) 「水の循環系モデリングと利用システム」 (代表:虫明功臣 福島大学教授) 、課題名「社会変動と水循環の相互作用評価モデルの構築」 (代表:寶馨 京都大学教授) の一部です。
21 世紀における世界的な懸念の一つは、水に関する危機的状況の発生です。気候変動や異常気象、社会の変動が甚大な水災害の危機や水利用に関する紛争をもたらす可能性があるのです。本研究では、こうした状況を回避するために、従来、個別に開発されてきた水循環解析モデルの共通化と精度向上を目指しています。また持続可能な水政策の立案・決定に資するような成果を導き出すことを目的としています。
特に、急激な人口増と社会の変動が予測されるアジア域を対象に、我が国との関係を水循環の観点から考究します。すなわち、
以上のような状況を鑑み、土木研究所ではタイ王国の中央部に位置するChao
Phraya川流域を対象として、社会変動を考慮した水循環解析を行っています。
世界各地で頻発している洪水や暴風雨などの水関連災害による被害軽減策提案のためには、気象水文、被害、社会経済等の諸データを統合管理し、共有、有効活用できるデータベース構築が必要です。
そこで本テーマでは、そのようなデータを網羅し、一般の研究者も利用可能なデータベースを構築し、そこから得られる様々なデータを分析することで水関連災害による被害軽減への貢献を目指します。
水文情報の乏しい地域における人工衛星雨量情報の現地利活用に関する研究(重点プロジェクト研究)
発展途上国など水文情報が乏しい流域において、効率的・効果的に洪水予警報システムが構築できるように、グローバルなGISデータや人工衛星雨量情報を活用した洪水予測システム(IFAS)を開発するとともに、発展途上国や実務技術者と一緒になって機能の追加や改良を図ります。

総合洪水解析システム(IFAS)の概要
閉鎖性水域や河川において,種々の対策が行われているにも関わらず栄養塩濃度は横ばい傾向にある。水質改善のために河川管理者によるマスタープラン策定が行われているが、発生源ごとの水域への栄養塩類の流出機構が明確でなく、また、発生源毎の寄与度と対策効果を総合的に評価できる流域規模の水質評価モデルが存在しないという問題点があるため、目標の実現に不確実性が残る。水質改善計画を確実なものにするためには、発生源ごとに窒素・リン等の栄養塩類の流出過程を追跡する手法と、土地利用や営農形態の変化等の定量的影響やそれらの相互関係を含めて総合的に把握・分析できるツールを開発する必要がある。
本研究では、土木研究所で開発を行ってきた流域水・物質循環モデル(WEPモデル)を基盤としつつ、栄養塩類の発生源ごとに水域への流出機構を明らかにし、窒素およびリン流出・輸送モデルを追加することで、表流水と地下水の流域規模での総合的な水・物質循環モデルとして実用的なものとする。さらに、内外の物質循環モデル適用事例調査を踏まえつつ、現実の流域で施策立案に有効な情報を抽出するためのモデリングガイドラインを整備する。
近年頻発する中小河川での水害時の危機管理支援や水系の高度な低水管理による水資源の有効利用を図る上で、流域に入力される降水量分布を全国どこでも入手 できるレーダ雨量計データの利活用は非常に有効な選択肢である。しかし、その高度利活用の具体的方策や効果に関する調査が十分でなく、レーダ雨量計の潜在 可能性がほとんど生かされていない。既存のレーダ雨量計情報を十二分に活用した雨量解析・洪水危険度評価技術を確立することで、水害時の危機管理支援を推 進することが今必要とされている。
レーダ雨量計データを活用したDAD解析等の雨量解析技術や気象庁レーダと連携運用による観測精度向上技術、及び、それらを活用した洪水危険度評価技術を
開発することで、地上水文観測網が十分ない中小河川流域での危機管理支援のための技術を開発する。
新しいセンサ技術を活用した流量観測データの信頼性向上に関する研究
河川計画の基盤となる流量観測データの精度確保と効率化の両立による信頼性の向上は不可欠の要件である。しかし、流量観測の現地作業と内業作業の両者にお いて昭和30~40年代以来本質的な変化のない非効率的な作業実態がある。このため、観測に関する新技術や水位流量曲線作成・照査過程における省人化・コ スト縮減が必要であり、流量観測データの精度確保と効率化の両立は喫緊の課題となっている。
本研究では、ドップラー方式超音波流速プロファイラー(ADCP)を中心として現場での流量観測精度を検証した上で実利用のための適用・運用基準案を作成 するとともに、流量観測統計資料を確定する上で重要な水位流量曲線の作成照査を効率化するためのシステム化技術として、同作業の支援システムを改良し、流
量確定作業における精度確保と省人化・コスト縮減の両立を図る。これらにより、低水・高水流量観測データの信頼性向上技術を提供する。
気候変動に伴う全球および特定脆弱地域への洪水リスク影響と減災対策の評価
気候変動による世界規模での洪水リスク増大の懸念が広がっている。本課題は、超高解像度大気モデルの出力成果と分布定数型の洪水解析技術を組み合わせて、世界の洪水リスクの変化予測を行う。(1)まず気候変動予測に基づき洪水外力の変化を分析し、また社会的データに基づき社会の洪水脆弱性を分析して、これらを合わせ、現在から近未来・21世紀末に至る10~40kmメッシュでの、洪水リスク変化に関する世界地図を作成する。(2)特に危険な流域については、1kmメッシュでリスク増大の詳細を分析する。(3)ともに、リスク増大に適応するために、洪水の利益も考慮しつつ、必要な対策シナリオを提案し、そのコストも算定する。
水災害が世界的に急激に増加している中で、事前対応の重要性が指摘されており、水災害のリスク評価が急務となっている。構造物対策を進めることがむずかし い途上国においては、リスク評価結果を土地利用等の非構造物対策に反映させることが有用な手段と考えられている。しかし、これらのリスクを評価する際に必 要となる精度の高い地形データが、途上国では整備されていない場合が多く、リスク評価の障害になっている。これに代わるものとして衛星による地形データの 活用が求められているが、水災害リスクを評価する際の精度評価がなされていないため、早急に検討する必要がある。
本研究においては、NASAのSRTM3を用いた場合の地形再現精度検証、JAXAのALOSデータを用いた場合の地形再現精度検証、それぞれのデータを
用いた場合の水災害リスク計算を最適化する地形データ処理手法の開発、洪水流出等と浸水計算を組み合わせた水災害リスクの評価を行う。また、衛星地形デー タ処理の一連の作業をマニュアル化するとともに衛星地形データの活用教材を作成する。