岩手県岩泉町と防災に関する研究連携協定を締結しました


締結式での中居健一町長(左)と澤野グループ長
締結式での中居健一町長(左)と澤野グループ長

 岩手県岩泉町とICHARMは、「中山間地における水関連災害リスクに係る調査研究・技術開発に関する連携・協力協定」を締結し、平成31年2月18日、中居健一岩泉町長臨席のもと、岩泉町役場において協定締結式を実施しました。この協定を踏まえICHARMは今後、岩泉町との緊密な連携のもとで、災害に関する住民意識調査や洪水リスクの評価手法の検討、および災害情報共有システムの利活用などに関する研究を実施する予定です。


1.協定締結に至る背景・経緯

 近年中山間地における洪水・土砂災害が激甚化・頻発化しています。中山間地は、現象の予見が難しく、状況変化が急激であることが特徴で、さらにこのような地域での高齢化や人口減少の進行が、地域の防災力の低下となり、地域の脆弱性が増していることが大きな被害につながる要因となっています。これらは中山間地を擁する市町村での共通の課題であり、このためICHARMでは中山間地における水災害防止・軽減に向けた研究活動を、国、県、市町村等と連携しながら進めています。

 今回の協定で、平成28年台風10号で甚大な被害を受けた岩手県岩泉町とICHARMは、災害に関する住民意識調査や洪水リスクの評価手法の検討、および災害情報共有システムの利活用などに関する研究を連携して行うことに合意しました。

 なお、同様の内容の覚書を平成30年6月に新潟県阿賀町と締結しており、今回が2例目となります。


2.研究内容(予定)

 以下の複数の研究を有機的に組み合わせながら実施し、洪水リスクの低減を目指すこととしています。

(1) 住民による災害リスクの認知及び災害に対する意識に関する調査研究

 地区の特性を踏まえて今後必要となる洪水対策を検討するために、アンケートにより、お住まいの住民の皆様の水害意識や現在の水害への備えを把握

(2) 災害リスクの評価手法に関する研究

 近年、災害対策基本法に基づく地区防災計画の作成によるコミュニティーレベルでの災害対応力・備えの強化が期待されていることから、氾濫解析(数値シミュレーション)によって地区ごとの洪水リスクを診断し、地区単位でのリスクの特性を分析することで、効果的・効率的な減災対策の立案・実施につなげる


「洪水カルテ」を利用した地区ごとの洪水リスク診断の例(新潟県阿賀町での実施例)
「洪水カルテ」を利用した地区ごとの洪水リスク診断の例(新潟県阿賀町での実施例)

(3) 災害情報共有システムの開発及びその利活用に関する研究

 気象庁や河川管理者(国、県)などが公表している様々な災害に関する情報や、現地の状況情報を、一つのホームページサイトで閲覧できる、「ICHARM災害情報共有システム(IDRIS)」を用いた災害ポータルサイトを構築する。これにより、災害時の効率的な情報収集および平常時の水害リスクの理解促進が可能になる。

新潟県阿賀町で開発中のIDRIS画面
新潟県阿賀町で開発中のIDRIS画面

(4) 災害リスク評価を用いた地域防災力向上に関する研究

 氾濫解析結果による洪水対応タイムラインや、ICHARMが作成中の「水害ヒヤリ・ハット集」を活用し、災害対応上注意するべきポイントを時系列で押さえた訓練方法を提案する。これにより、実際の災害に即した対応能力向上が期待される

(5) その他本協定の目的を達成するために必要な事項

 仮想現実(Virtual Reality: VR)技術を用いた「洪水疑似体験ツール」による疑似洪水体験手法を提案する。これにより、平常時からの洪水危機意識醸成が可能になり、事前の備えや早期避難に貢献する