第71回ICHARM R&Dセミナーを開催

 ICHARMでは水災害分野に関する国内外の専門家による最新の研究や知見についての講演を開催し、「ICHARM R&Dセミナー(ICHARM 研究開発セミナー)」として参加者の研鑽を深める機会としています。第71回の今回は、2月14日に京都大学東南アジア地域研究研究所(Center for Southeast Asian Studies:CSEAS)におけるGCRインキュベーション・プログラムに採択された「蚊媒介性感染症の予防を取り入れた水災害のリスクコミュニケーションの改善: マレーシアペナンを例として」の研究グループの代表者である吉川みな子連携教授(CSEAS)、共同研究者のFaizatul Akmar Abdul Nifa准教授とKhai Lin Chong上級講師(いずれもマレーシアウタラ大学(Universiti Utara Malaysia))をお迎えしました。なお、このたびのICHARMへの訪問はAbdul Nifa准教授とChong上級講師がICHARMとの連携強化を希望されていたことから、上述の課題研究の活動の一部として実現したものです。

 まず吉川連携教授にCSEASの概要を紹介いただきました。CSEASは1963年に京都大学内に発足し、タイとインドネシアにも拠点を有し、学際的な地域研究を展開してきました。研究部門として相関地域(Cross-regional Studies)・政治経済共生(Political & Economic Coexistence)・社会共生(Social Coexistence)・環境共生(Environmental Coexistence)・グローバル生存基盤(Global Humanosphere)の5つがあり、約270,000の蔵書の内の3分の1は現地語で書かれたものであり、これはアジアで最大規模であることなどが紹介されました。

 次いで、Abdul Nifa准教授から“Post-Disaster Socio-Economic Community Empowerment: The Case of Kampung Iboi, Baling, Kedah, Malaysia”のタイトルで、2022年に土砂災害を経験したKupang川沿いのKampung Iboi地区における、国際NPO「MERCY Malaysia」を通じたコミュニティベースの復興活動への取組について講演頂きました。さらに、Chong上級講師から“Bridging the Gap: Converting Flood Simulation Insights into Empowering Community Programs” のタイトルで、RRIモデルでのシミュレーションをCBDRM (Community Based Disaster Risk Management)にどのように生かすかについて講演頂きました。

 フロアを交えて、復興計画に気候変動の考慮はされているか、コミュニティのレジリエンス向上において現地がどのようにオーナーシップをもって行うべきか、などの議論が行われました。

 セミナー後には、ICHARMセンター長や他ICHARM幹部と意見交換を実施し、土砂災害についての研究やICHARMにおけるインターンシップについて意見交換しました。

吉川連携教授 Abdul Nifa准教授 Chong上級講師
(左から 吉川連携教授、Abdul Nifa准教授、Chong上級講師)

<参考情報>
 講演者3名が参画しているインキュベーション・プログラムの詳細はこちら
「蚊媒介性感染症の予防を取り入れた水災害のリスクコミュニケーションの改善: マレーシアペナンを例として」