不確実性を付した洪水予測情報発信手法の開発

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研究の背景

 決定論的な洪水予測は、降水強度の時空間分布や降雨流出過程の非線形性などの不確定要素から常に精度問題が付きまとうため近年ではアンサンブル予測がしばしば用いられる。

 アンサンブル洪水予測はアンサンブルメンバーの集合を幅や平均値などで解釈するため、「適時行動に繋がりにくい」や「意思決定が難しい」という課題がある。 予測情報の不確実性が定量的に示されない限りは意思決定のサポートにならず、予測が「当たった」、「外れた」の議論から脱却できない。

研究の目的

 洪水予測情報にその尤もらしさを付加することで様々なステークホルダーの洪水に対する備えや対応のための適時の意思決定をサポートする手法を開発し、製造業での前倒し生産やサプライチェーンの安定確保(代替調達等)、従業員の配置調整、農業の早期収穫や戦略的農地保護などに寄与する。

リードタイムに応じた分散指標の変化
信頼度に応じた行動

他機関との連携

なし

研究期間

令和6年度 ~ 令和8年度

研究担当者

上席研究員新屋 孝文
主任研究員 宮本 守

研究概要・成果

確率分布情報を想定したアンサンブル粒子フィルタ洪水予測モデルの改良
アンサンブル洪水予測の結果を確率分布で表現することを想定して、粒子フィルタのパラメータであるリサンプリング数や尤度による重み付けに関する数値実験を実施する。これにより確率分布情報を発信する際に必要な粒子数等を求める。さらに、時々刻々と変化するアンサンブル予測の何時間先までを対象とすべきか等、リードタイムに関する分析を異なる複数の流域において検討する。

確率密度関数の分散指標に基づく予測不確実性の定量化
各アンサンブルメンバーによって構成される予測値(水位または流量)の分布を確率密度関数に変換するためのフィッティングや分布系選定の手法を開発する。また、その確率密度関数の分散指標や信頼区間の時間的変化に基づいて不確実性を定量化する。

発信対象に応じた予測情報の伝達方法と対応行動の提示
予測情報の受け手側である企業や自治体に対してヒアリング等を実施することで、受け手側に必要とされる不確実性情報や適時判断に繋がる様式を検討する。さらに、発災前後の時間経過に伴う対応行動を不確実性の変化とともに例示する。